歯を失う原因は、急な事故や怪我、虫歯や歯周病など様々ですが、歯を失ってしまった場合、放置することで噛むといった歯の機能を失うだけでなく、見た目の美しさといった審美面も劣ってしまいます。そのため失った歯の本数や箇所にもよりますが、「インプラント」「ブリッジ」「入れ歯」の補綴治療をおこない、歯の機能や審美性を回復させることが必要になります。その際、ほとんどの歯を失った場合や、歯を全て失った場合には、一般的に入れ歯による治療を希望する方が多いです。この場合、総入れ歯を使用しますが、保険適用での治療が可能で治療期間も短く、すぐに歯が入ることから、特に高齢者の方の補綴治療として人気があるのです。ただし、保険適用での入れ歯に使用する素材は、レジン(プラスチック)に限定されていることから、厚みが出やすく口腔内の違和感が大きくなりやすい、長期間使用することで経年劣化してしまう、歯の変色や擦り減が生じるなどの審美面におけるデメリットもあります。また、噛む時の刺激が脳に伝わらないことから、顎の骨の吸収が起こってしまい、入れ歯が合わなくなる場合もあります。さらに咬合力も天然歯の1割〜2割程度しかないので、食事を楽しむことも難しくなります。これらのことから、近年では入れ歯からインプラントにする患者さんも多くなっています。ですが、残存歯がほとんどなかったり、全ての歯を失っている方にとって、インプラント治療は容易ではありません。
基本的にインプラント治療は保険適用外治療(自由診療)となり、失った歯の顎の骨に人工歯根であるインプラント体を埋入する外科手術が必要になります。総入れ歯や歯が全くない場合、従来のインプラント治療では歯の機能を回復させるために、片顎に10本のインプラント体を埋入する必要があり、身体的・経済的負担は非常に大きくなってしまいます。総入れ歯を長期間使用している場合は、顎の骨吸収が進んでいることも多く、インプラント治療前に骨量を増やす「骨造成」などの手術が必要になってしまうこともあり、さらに負担がかかるケースも少なくありません。その際に、片顎に4本〜6本程度のインプラント体を埋入することで、連結した12本の人工歯を支えることができる「オールオン4」という治療法であれば、埋入するインプラント体の本数も最小限に抑えられるため、身体的・経済的負担を抑えながら、天然歯と同等な咬合力や審美性を回復させることが可能なのです。
オールオン4のメリット
・身体的・経済的負担が軽減する
オールオン4は、人工歯根であるインプラント体を片顎に4本〜6本程度埋入することで、連結した12本の人工歯を支えることができます。そのため、従来のインプラント治療に比べて手術の範囲を抑えることができるので、身体的負担の軽減に繋がります。また、インプラント体の埋入本数が多くなるほど費用も高額になりますが、埋入するインプラント体の本数が少ないことから、経済的負担も軽減できます。
・骨量が少なくてもインプラント治療を受けることができる
従来のインプラント治療は、インプラント体を埋入するための十分な骨量がなければおこなうことができません。もしも骨量が不足している場合は、骨量を増やす「骨造成」などの手術が必要になるのですが、オールオン4は骨量の多い箇所に傾斜埋入することで顎の骨との接触面が大きくなり、安定的に連結歯を支えられることが可能になります。そのため骨量が不足している場合でも、骨造成などの手術なしでインプラント治療をおこなうことができます。ただし、顎の骨の状態によっては骨造成が必要になる可能性もあります。
・手術の当日に仮歯を装着することができる
オールオン4は一定の条件を満たして入れば、治療したその日に仮歯を装着することが可能です。仮歯が入るので、普段の生活に問題はほとんどありません。従来のインプラント治療では、骨とインプラント体がしっかりと結合してから人工歯を装着しますが、手術の当日に仮歯が入ることで、軽い食事であればその日から噛むことができますし、審美面の回復にも繋がります。それによって、患者さんの生活の質(QOL)の向上が期待できます。
・骨吸収を抑制することができる
歯を失ってしまった部分の歯槽骨は、歯を支えるという役割を失ってしまいます。そのため、徐々に骨が痩せていく「骨吸収」を起こしてしまいます。歯を失った際の治療法である「入れ歯」や「ブリッジ」も同様に、長期間使用することで骨吸収を起こしてしまい、トラブルを引き起こしてしまう場合もあります。しかしオールオン4は、顎の骨にインプラント体を埋入する治療法なので、噛む刺激が歯槽骨に伝わることから骨吸収を抑制することができます。
・審美性の高い口元を得ることができる
従来のインプラント治療では、インプラント体の埋入位置によって人工歯の作製における自由度に規制があります。しかし、オールオン4は最も適切な埋入位置を事前のシミュレーションによって計画するため、人工歯の作製の自由度が高く、審美性の高い美しい人工歯を作ることが可能です。さらに歯茎のラインやボリュームも整えられるので、口元の美しさを取り戻せます。また噛み合わせも整うことにより、食事を味わいながら楽しむことができます。
当院では、最新のCAD-CAM2台とプロセラジェニオン2台を導入しております。口腔内スキャンからインプラントの上部構造の装着までが最短の時間で対応可能です。美しくより精度の高いインプラントの上部構造の製作を常に追求しており、患者さん一人ひとりに適した上部構造を提供できる体制を整えております。
即時負荷を可能とするオールオン4
インプラント治療はインプラント体を埋入してから、顎の骨と強固に結合する「オッセオインテグレーション」を利用することで、天然の歯のような噛み心地を得ることができるのですが、結合するまでの治癒期間が必要になり、入れ歯やブリッジなどの治療に比べて治療期間が長くなってしまいます。また、十分な骨量が足りない場合は骨造成手術が必要になるため、治療期間はさらに長くなります。しかし一定の条件を満たせば、手術したその日にインプラント体に仮歯までを装着することができる「即時負荷」という治療法が可能です。早期に歯が入ることで審美面の回復が可能となることから、従来のインプラント治療の審美面におけるデメリットの「歯がない期間」がなくなります。
コンピューターガイドシステムを使用した治療が可能
コンピューターガイドシステムとは、CTスキャンで得た患者さんの口腔内の画像データを基に、コンピューター上で手術のシミュレーションをおこない、立案した治療計画から作製したサージカルガイドを、インプラント体を埋入する手術の際に使用することで治療計画通りに手術をおこなうシステムのことをいいます。
インプラント治療は外科手術を必要とすることから、安全に治療をおこなうために患者さんの口腔内の状態や、顎の骨の形態や質、走行している神経や血管の位置などを詳細に把握することが重要です。これらをCTスキャンで撮影し、コンピューター上で作製した3D画像を基に、手術の事前シミュレーションをおこないます。シミュレーションを基に、インプラント体を埋入する際の「位置」「角度」、「深度」だけでなく、上下顎全体の噛み合わせと歯並びも考慮しながら、治療計画を立案します。それにより安全で正確な治療を可能にし、機能面や審美面にも優れたインプラント治療ができるのです。手術の際には治療計画からオーダーメイドで作製した「サージカルガイド」を患者さんの口腔内に装着し、ガイドに沿って歯茎に穴をあけてインプラント体を埋入します。歯茎を切開する必要がない「フラップレス手術」なので、手術時間も短縮でき身体的負担も最小限で済みます。
オールオン4において最も重要な要素である「インプラントの埋入位置」ですが、以前はフリーハンドでおこなっていました。しかし、現在は多くの症例でコンピューターガイドシステムを使用したインプラント体の埋入をおこなっており、患者さんの身体的負担を最小限に抑えることや、サージカルガイドを用いることで正確で安全な手術をおこなうことを可能にしています。また、上部構造の「アクセスホール」(上部構造とインプラント体をネジで固定するための穴)の位置をコントロールすることで、さらに美しい仕上がりとなります。
長期的に高い審美性と清掃性を得るために
従来のインプラント治療とは違い、オールオン4は顎全体のインプラント治療となることから、実際の口腔内に装着する最終的なインプラントの人工歯の形態を考慮した上で、場合によっては顎の骨の整形が必要もなることがあります。骨の整形手術は特別に大きな手術を伴うわけではなく、浸潤麻酔を用いておこないます。顎の骨を計算された形状に整形することにより、高い審美性と治療後の高い清掃性を長期的に得ることが可能になります。また、同時に理想的な歯茎の形をつくりあげていくことによって、歯茎と人工歯の基底部分との間に食べカスや歯垢(プラーク)などの汚れが付着することを最小限に抑えることができます。汚れが付着しにくい口腔環境を作ることは、インプラントを長期間快適に使用することができるといった、良好な予後にも繋がるのです。
まとめ
歯を全て失った場合に、オールオン4は機能性・審美性の高い治療法です。またお手入れ次第では半永久に使用することも可能なので、美しい口元で快適な毎日を過ごすためにも、治療後はご自身のセルフケアを正しくおこなうととも、歯科医院での定期的なメンテナンスを受けることが大切です。当院ではオールオン4をおこなっております。オールオン4の治療をお考えの方は、一度ご相談頂くことをお勧めいたします。
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